アレクサンダー・テクニーク・コングレス(シカゴ)参加報告

7月末から、シカゴで開催されたコングレスに参加してきました。
私は、前回の2015年アイルランドのコングレスに続き、今回が2回目の参加でした。
内容の概要や印象に残ったことを報告します。

概要

第11回アレクサンダー・テクニーク・コングレスは、2018年7月29日から8月4日まで、シカゴのLoyola大学にて開催されました。世界中のアレクサンダー・テクニーク教師やトレーニーを中心に約600名が集まりました。
第1回のコングレスが1986年にニューヨークで開催されて以来、32年ぶりの米国開催だそうです。

湖に面したLoyola大学のキャンパス

今回のコングレスは、Science, Performance, Educationとの繋がりがテーマで、外部からの招待講師による基調講演・AT教師の講演・パネル討論のそれぞれが、これら各テーマに関連した構成になっていました。

Science, Performance, Educationとの繋がりがテーマ

午前は事前登録したベテランの先生のクラスを2日ずつ3回受講し、午後はワークショップに選択参加し、昼と夕方に講演やパネルディスカッションがあり、夜はコンサートやパーティーに参加し、あっという間の一週間でした。

Science分野の講演

私は主にScience分野の内容を聴講していたので、簡単に報告します。

基調講演で印象に残ったのは、精神科医・精神分析医ノーマン・ドイジ(Norman Doidge)博士の “The Brain’s Way of Healing” と題する3時間にわたる講演でした。

神経可塑性に関する、最新研究の実験や治療事例についての興味深い内容でした。

脳は何歳になっても変化が可能で、損傷した機能の回復を諦めてはいけないこと、(腕などを)動かせないと脳が学習してしまうと対応する神経が衰退してしまうこと、などの話がありました。

固定観念で人間の可能性に制限をかけて考えてはいけないと思いました。神経の病気の症例の話題が多いですが、日常の学習でも同様のことが起こるのだろうと思います。
私の英語力では十分理解できなかった部分が多く残念でしたが、同タイトルの本「脳はいかに治癒をもたらすか」が日本でも出版されていたのを後から知り、読んでいるところです。

ノーマン・ドイジ博士

Science分野の基調講演では他に、進化生物学者のニール・シュービン(Neil Shubin)博士による “Your Inner Fish” というタイトルの講演がありました。魚から人までの進化の過程で、ヒレから腕への変化の話などがありました。こちらも「ヒトのなかの魚、魚のなかのヒト」という本が日本で出版されています。

ニール・シュービン博士

アレクサンダー教師による講演の中では、Rajal Cohen博士の
“Science Catches Up – Alexander Technique Principles and 21st Century Reserch”
が印象に残りました。

本講演では、プライマリ・コントロール、抑制(インヒビション)、方向性(ディレクション)など、アレクサンダー・テクニークの原理の各項目について、科学的なエビデンスがどれぐらいあるかをまとめ、関連する実験内容について報告していました。

Rajal Cohen博士

私は以前から、アレクサンダーを科学する研究の動向に興味を持っています。アレクサンダー・テクニークは脳神経系に働きかけるワークです。教師が言葉やタッチで生徒に働きかける際に何が起こっているのかを説明する上で、近年の脳神経科学の進歩が関係してくると思っています。

印象に残ったクラス

様々な先生のクラスで多様な学びがありましたが、ここでは楽しかった3つを紹介します。

今回一番楽しみにしていた、バランス・アーティストのWolfgang Weiserさんのクラスでは、綱渡りを1人ずつ体験しました。ちょっとした恐怖心で固まった状態から、先生のサポートにより、足元を思い、頭のてっぺんを思い、全身を思い出し、不安定に歩くことを楽しみました。

Wolfgang Weiserさんと綱渡り

もうひとつ楽しみだったのが、ペドロ・デ・アルカンタラ(Pedro de Alcantara)さんのクラス。日本でも出版されている「音楽家のためのアレクサンダー・テクニーク入門」の著者です。好きな本なので、お会いするのを楽しみにしていました。
ジョークを多くまじえながら(英語力不足で笑えないのですが)、楽しい雰囲気でクラスをリードして下さる先生でした。アクセントを意識した二人組での会話や、単純な歌を口ずさむグループワークを通して、リズムや発音のことを学びました。体から湧き出てくる自然なリズムを、楽しみました。

午後のワークショップで楽しかったのは、ヴァイオリニスト向けのクラスです。
顎宛て・肩当ての作成プロジェクトの紹介の他、ヴァイオリニスト向けワークショップで取り入れているエクササイズなどをやりました。ヴァイオリンの話題は楽しくて、一番言葉の壁を感じずに参加できたクラスでした。

Gilles Rullmannさん

エクスチェンジ・ルーム

エクスチェンジ・ルームは、参加者同士がお互いにワーク交換できる場です。ベテランの先生がいらっしゃれば、ワークをお願いすることもできます。

私は、イスラエルのユフダ・クーパーマン(Yehuda Kuperman)さんのレッスンを受ける機会がありました。
以前、東京のワークショップを受講した際、手の使い方について詳細に教えていただいたのが印象に残っています。静かな中に深い存在を感じる先生です。
今回、ごく短時間のテーブル・ワークで、脊椎に変化が起きて明らかに動きやすくなる体験をしました。

Yehuda Kupermanさんのテーブル・ワーク
photo by Ralf Hiemisch

生活など

宿泊は大学の寮で、食事は毎日3食を大学のカフェテリアのビュッフェでとりました。
夜は参加者が出演するコンサートやショーが数回あり、最終日の夜には、シカゴ・ブルース・バンドの演奏を迎えてダンスパーティーを楽しみました。

ダンス・パーティーにて

休憩時間の度に、ミシガン湖を見に行って、朝・昼・夕と変化する水面の光景を眺めていました。心がリフレッシュする環境でした。

感想

3年前にアイルランドで初めてコングレスに参加したとき、私はまだ卒業前のトレーニーだったので、何かを学びとろうという意欲にあふれていたと思います。新しい情報を入手し自分のスキルを向上させたくて、チャンスをうかがっていました。
教師として参加した今回は、ゆるりとした心もちで、その場で感じることを自然に吸収する時間を過ごしたように思います。
教師としてはまだまだ経験が浅い自分ですが、他の先生方がどういう活動をしているのかに関心が向き、自分がどんな活動をしていきたいのかを考えました。
そして、何十年も自分の探究を続けている多くの先生と共に過ごして、私の探究の旅路もまだまだ色々な展開があるのだろうと楽しみになりました。

学校でお世話になった先生方に一同にお会いでき、他校の日本の方とも知り合いになり、拙い英語ながらも他国の参加者の方と交流できて、充実した時間を過ごしました。

学校時代にトレーニングを受けたGreg Holdaway, Cathy Madden両先生と

学びの成果は自分のレッスンを通して、皆さんとシェアしていきたいと思います。

次回のコングレスは、2021年にドイツ・ベルリンで開催される予定です。



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