ヴァイオリン名器の秘密と科学

NHKのクラシック音楽館「バイオリン500年の物語」(7月放送)を見ました。
ジェームズ・エーネスの演奏とともに、ヴァイオリンの歴史をたどりながら、名器ストラディヴァリウスの秘密に迫るというドキュメンタリーで、おもしろい内容でした。

その中で、エーネスの演奏を測定し可視化した研究結果が紹介されました。
1つは、今回の主題である、楽器の音色の評価に関するもの。
もう1つは、同時に測定していた右腕の筋力センサーで、私はこの結果に興味あり。

まずは楽器の評価の話から。
無響室内でヴァイオリンを取り囲むように小さなマイクを多数設置し、そこでの演奏を測定してストラディヴァリウスの指向性を評価していました。
モダン楽器では、低音域の下方向、高音域の上方向の指向性がみられますが、ストラディヴァリウスでは、中音域(1KHz付近)で正面方向への強い放射が観測されました。これにより、音がより遠くまで伝わる性質があるようです。さらに上下方向への揺らぎも観測され、ストラディヴァリウスの中音域の特徴的な性質がわかりました。

ストラディヴァリウスに近い響きの再現を目指している日本の楽器職人も紹介されました。その手法では、表板・横板を叩いて板の音の高さを調整しています。
エーネスが職人さんとの対話中に、「オールド楽器に何か魔法があると考える人もいますが、そうではなく科学・音響・才能の問題だと思います。」と語っていたのが印象的でした。 

さて、私が興味をもった筋電計の結果ですが、番組最後に少しだけ紹介されました。
右の上腕三頭筋についての結果です。
ダウンボウを繰り返し弾く実験で、弓が先にいくにつれ、本来力が入ると思われる筋肉がエーネスの場合には逆に脱力している、という結果が紹介されました。 

上腕三頭筋は、肘を伸ばすときに働く筋肉です。
確かにダウンボウでは、肘が開いていくので関係しそうですが、重力のサポートを受ける方向なので、あまり力はいらないような気もします。しかし徐々に脱力するというのは、興味深い結果だなと私は思いました。

右腕の他の筋肉にもセンサーがつけられていたので、研究結果が後日紹介される機会があるかもしれませんね。

演奏家の行動への科学的な評価が進んでいくことに、私は関心があります。
ヴァイオリン演奏の筋肉については、また別の研究も紹介したいと思います。