右腕の力みを手放した日~ヴィヴィアン初レッスン(1)

ヴィヴィアン・マッキーさんは、私が大きな影響を受けたアレクサンダー・テクニークの先生です。ヴィヴィアンと出会った最初のレッスンで、私はヴァイオリンの弾き方が変わる忘れられない体験をしました。

BodyChanceに入学した2009年のことです。クラスでヴァイオリンを弾いてみるようになり、何人かの先生に弾くところを見てもらいました。
重要なのは楽器の構え、つまり体軸の使い方だと気づきましたが、軸のワークの後で、腕の動きについても言われることがありました。先生方が色んなアイデアでアプローチして下さるのですが、普段の奏法とかけ離れると私がそれを受け入れられなかったりして、自分の腕の使い方が何か余計なことをやっているらしいという問題意識だけがありました。

秋になって、ヴィヴィアン・マッキーさんというチェリストのアレクサンダー教師が来日するときいて、チェリストの先生にボーイングのことをきいてみようと決めていました。ヴィヴィアンさんは、なんと巨匠カザルスのお弟子さんだというのです。それだけでも、会ってみたくなります。

クラスの日程の前に個人レッスンを予約したので、初対面は1対1(通訳の方つき)ということに。
ボーイングのことを相談したかったので、それに適切な曲はなんだろうと考え、ちょうど練習中のバッハのパルティータ3番のプレリュードを持って行くことに決めました。

レッスンの日。

部屋に入ると「弾いてみて」と言われて、とりあえず楽器を出し、プレリュードの頭から数十小節ほどを弾きました。
まず弾くというのも緊張することですが、音楽のレッスンでは弾いてしまえば、もう先生はお見通しですよねという気持ちになるので、ほっとしました。

私は、胴体が前に傾いて楽器にしがみつくような構え方をしていたので、ヴィヴィアンは何とかしてそれを止めさせたかったようです。
体の構造の話から、才能豊かなのにヴァイオリンで体の発育に悪影響を及ぼしてしまった子供の話など、いろんな話をしてくれました。また、スキップをしたり、通訳さんと背中合わせで弾いたり、色んなこと試しました。

「ボーイングを良くしたいです!」という私の希望に、プレリュードの最初の数段を題材にレッスンをしてもらいました。
肘の動きについてアドバイスをもらい、「肘をただ開く」ことでダウンボウを弾く練習をしました。それまでの私は、ダウンボウの途中でひっかかりがあるような腕の動きをしていたようです。
またE線では、重力にまかせてダウンボウを弾き、その反動でアップボウを弾く練習をしたりもしました。ダウンで手を落とせば弓が跳ね返ってくるから、アップを自分でやる必要がなくなり、楽に弾ける、ということでした。

まるでヴァイオリンのレッスンのような内容ですが、頭と脊椎のコーディネーションに常にアプローチしながら、行われました。
そうやって少しずつ、立ち方が変わり、胴体が変わり、腕の動きが自然になり、音も変化していきました。

そんなレッスンが数十分ほど続いた後、ヴィヴィアンが、
  「ボーイングは良くなったわよ
と言いました。
私が、
  「弾き方も音も良くなったような気もしますが、自分が何をしていたのか、わかりません。」
というと、
ヴィヴィアンは、
  「(それまでやっていた余分なことを) やらなかっただけよ
と言い、何が変わったのかは教えてもらえませんでした。

・・・ つづく ・・・

(写真は2014年ヴィヴィアンのクラスにて)