自分の可能性に出会う

何かを「すること」に焦点があたっているとき、その主体である「自分」が意識から切り離されてしまうことがあります。
定義を保留する(前回記事)ことで、新しい自分の可能性に出会うとき、やっていることから様々な学びを得られるようになります。

定義を保留することで、自分や世界との関係性の新しい可能性を経験します。
自分はこうもあれるという可能性に気づき、自分を一瞬一瞬発見し続けることで、自分がどういう人間かという理解が深まって、自分自身と平和な関係を築けるようになることがあります。

今年のトミー先生のクラスでは、自分自身への深い気づきを得るレッスンを、たくさん見ることができ、数年前に私自身が経験したトミーさんのレッスンを思い出しました。
その頃の私は、疲れていて元気がない時期で、ヴァイオリンを弾いてもしっくりこないなぁと思っていたので、トミーさんのクラスで、ヴァイオリンを弾くことをレッスンしてもらいました。

最初に演奏すると、「弾くことにコミットしていないね」と言われました。自分の存在が、やっていること(演奏)から切り離されていたのです。
トミーさんの手を使ったワークで心身の統合が起こった後、楽器を構えて指板が視界に入った瞬間に、「こんな見え方、新鮮だ」と思いました。
物理的にも精神的にも「地に足がついた」状態で再び演奏すると、音が変わり、弾きたい音楽がクリアになりました。
そして、心の深いところに安心や安定のような感情を得ました。
作曲家への敬意をこめて演奏しながら、「こんな演奏ができるのだから、私は大丈夫だ」と思ったことを覚えています。

昔から、元気を出すためにヴァイオリンを弾くことは時々やっていて、「ベートーヴェンは力強いなあ」というように、「音楽」から力をもらっていました。
その日の体験は、そういうのとも少し違っていて、もっと演奏している「自分」への気づきが高いものでした。

体の使い方を知りたくてアレクサンダー・テクニークを学び始めたら、生き方が楽になった、という感想を持つ人が多いのは、このような経験をしていくからだと思います。

人生を去るときまでずっと、自分自身と平和な関係でいられたらいいな。
そんな学びを続けていきたいと思っています。

※写真は昨年のトミーさん来日時に撮影